「メールをご拝読頂きありがとうございます」は変?意味と使い方を解説

ある会社から、会員登録を促すビジネスメールを受け取りました。

締めの一言が掲題の文章。

「最後までご拝読頂きありがとうございました」

違和感はありませんか?

もし「別に変じゃない」とお思いの場合は、普段から相手に失礼なことを言ったり書いたりしている可能性があります。

ChatGPTやBardなどの生成AIも敬語の精度はいまいち。ご自身の書いた文章だけでなく、AIが生成した文章のチェックをなさりたい方はぜひ解説を読んでみてくださいね。

English here

目次

全く知らない人にタメ口で話しかけるか

メールを送ってきた会社にとって、私は「潜在顧客」です。もしかしたらお客さまになってくれるかもしれない人のこと。そして、全く知らない人です。

お客さまになりうる

身内でも知り合いでもない、最も遠い関係

こういう関係では敬語を使うのが無難です。

ビジネスは、サービスを利用してもらって成り立ちます。「お客さまは神様」は大げさですが、やはり「目上の人」として遇するべき相手。したがって、サービスを提供する側はへりくだり、お客さまに何かしてもらう際は敬う表現を用いましょう。

お互いに会ったことのない、全く知らない人と話す際は「ですます調」を使ったり、「さん」付けで呼んだりと、丁寧な話し方をするのが普通です。いきなりタメ口で話す人もいますが、なんだか居心地が悪かったり「馴れ馴れしい」と感じたりします。ちょっと難しい言い方をすれば、日本語には対象との心理的な距離に応じて表現を変える特徴があり、遠ければ遠いほど丁寧になるのです。

Ayan

フワちゃん。がタメ口なのは「そういうキャラクター」を貫いているからだそうですよ。

でも、好き嫌いは分かれますよね。「不快だから、この人がテレビに出てきたらチャンネルを変える」という方もいるようです。

言いたいことは「読んでくれてありがとう」

冒頭の「最後までご拝読頂きありがとうございました」に戻ります。

言いたいことは「最後まで読んでくれてありがとう」ですね。これを「最も遠い関係の目上の人」に対する表現に変更しましょう。敬語をどう取り入れればいいでしょうか。

名詞にも敬語はあります。例えば「返事」なら、「お返事」「ご返信」などが敬語表現になります(美化語)。「最後まで」は適切な敬語表現がないのでそのままでいいでしょう。

問題は「読んでくれて」です。「読む」のはだれでしょうか? 

メールを受け取ったお客さまですよね。したがって、「読む」主体を敬う表現(尊敬語)に変える必要があるのです。

「拝読」は敬語表現ですが、誰を敬っているかご存じでしょうか。

拝読の意味(goo辞書)

拝みながら読む、すなわち自分がへりくだることによって書いた人を敬う言葉(謙譲語)で、読んでくれた人を敬っているのではないのです。

ですから、「ご拝読して」は「俺様の書いたありがたい文章を拝みながら読んでくれ」のようなニュアンスになってしまうのです(ちょっと言い過ぎかもしれませんが)。

正しくは「メール拝読しました」「ご著書を拝読しました」などのように「いただいた文章をありがたく読みました」と言いたい時に使いましょう。

「ご拝読頂きありがとうございます」を正しい敬語表現(尊敬語)にするなら「お読みいただきありがとうございます」「お目通しいただきありがとうございます」などになります。

Ayan

敬語についてもっと詳しく知りたい人は、文化庁の『敬語の指針』をおすすめします。

「ご拝読させていただく」は誤り?

よく見かける類似の表現に「ご拝読させていただく」があります。

先ほどの説明通り、「拝読」は書いた人を敬いつつ読むという意味です。そこに「ご」をつけてしまうと、読んでいる自分を敬うことになってしまいます。「ご」をつけてはいけません。

自分がへりくだることで相手への敬意を表す敬語表現を「謙譲語」と言います。「〜させていただく」は便利なので多用されていますね。

「拝読させていただく」はどうでしょう。「いただいた文章をありがたく読ませていただく」という意味になり、口語では問題ないかもしれません。

ただ、先ほどの説明通り「拝読」はそれだけで謙譲語です。文法的には二重敬語になり、へりくだりすぎて奇妙な感じになります。「いただいた文章をありがたく読ませていただく」、何度もいただくを言っているとまどろっこしいですし、ふざけているのかと思う方もいらっしゃるかもしれません。

Ayan

一つの語に同じ種類の敬語を二つ使うことを「二重敬語」といいます。

書き言葉の場合は「拝読しました」と、簡潔にすると良いでしょう。

「お勧めいただいた本を拝読しました」

もう一つ気をつけたい使い方をご紹介しましょう。「拝読しました」は、例えば上司に勧められた書籍を読み、そのお礼をするといった場面では使えません。

なぜなら、上述のように「拝読」は「書いた人を敬って読む」意味だからです。書籍を書いたのが上司なら「拝読」で正しいですが。「お勧めいただいた本を読みました」で十分丁寧です。

「拝受」「拝見」「拝借」「拝顔」「拝眉」なども同じように使えばいいですね。

Ayan

「お顔を拝顔」だと重複表現ですから間違いですよ。

敬語は難しいですね。言葉の意味、伝えたい内容、聞き手との距離感などを総合的に考える必要があるからです。意味を正確に理解できた表現から使い、場数を踏んで慣れていきましょう。

これから送ろうとしている文案に自信がない方、敬語も含めてチェックをいたします。まずは無料相談にご連絡をくださいませ。お待ちしています!

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