元記者がプレスリリースする側になって思うこと 有料サービスを使うべき人は?  提携・配信の違いも解説

プレスリリースサービスが盛況です。最大手はPR TIMESですが、最近では@プレスが勢いがあるようです。出版大手のKADOKAWAは完全無料のサービス「PressWalker」を始めました。どれを選べばいいかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか?

それと相まって、プレスリリースのご依頼を受けることが増えました。もともとマスメディアで勤務していましたので、どんなプレスリリースなら取材する気になるのかをアドバイスしながら文案を作成したり、施策をご提案したりしています。

ただ、プレスリリースサービスを利用する側になって気になったのは費用設定です。月に何千万円も広告に費用をかけられる大企業なら月3万円程度のプレスリリースサービスは誤差みたいなものでしょうが、中小企業・自治体・個人事業主にとってハードルが高すぎます。敬遠している経営者も多いのではないでしょうか?

商品やサービス、事業そのものの良さをもっと知ってもらうには、メディアに認知してもらうことも選択肢。広告と同様、広報にもある程度の投資が必要です。ただし、必要のないプランやオプションを勧められているかもしれません。

有料サービスを上手に利用していただくため、元記者として感じるところをお伝えします。何かのお役に立てれば幸いです。

このコラムは以下のような方に向けて書いています。

  • プレスリリースをすることになったが、何から手をつけていいかわからない
  • どのプレスリリースサービスを選べばいいか迷っている
  • プレスリリースサービスの効果を知りたい
  • SNSでの知名度向上やウェブサイト経由での売り上げ増加に限界を感じている
  • 有料サービスに毎月料金を払っているが、効果に疑問を感じている
目次

 有料・無料のサービス比較 

プレスリリースサービスは有料と無料に大別できます。一般的な特徴を簡単に比較してみました。

有料サービス無料サービス
登録のしやすさ法人に限られる場合が多く、審査があるサービスも個人でも利用できる
エディタ文字装飾や複数枚画像の添付、動画の埋め込みもできる。リリース後の修正も可能(提携先は不可)文字装飾はできず、添付は静止画1枚のみなど限られる。リリース後の修正は有料の場合がある
提携先多数の提携先に自動転載される該当サービスのサイトのみ、または提携数が限られる
サービス品質配信元企業や配信情報に審査があるため、情報の信頼性が高い無審査か簡略化されているため、信憑性の乏しい情報やスパムも掲載されている場合がある
メディア露出メディア・記者側に認知されているため取材の可能性も一定程度期待できるメディア・記者側からの認知度が低かったり、信頼されていなかったりする場合もある
サポート無料ウェビナー開催や個別フィードバックのほか、原稿作成代行などのオプションメニューも充実メニューが限定的
SEO効果情報の質が比較的高いため、SEOでも高く評価されうる有料サービスに比べると効果が限られる場合がある
効果測定ツールを利用できる場合が多いツールはない

「提携」「配信」「パブリシティ」

いろいろ用語があって違いが分かりにくいので整理しましょう。

 提携メディア

プレスリリース原文を自動的に転載してくれるメディアのことです。プレスリリースサービスの本体サイトとまったく同じ情報が載ります。提携先(パートナーサイト)はニュースサイトだけでなく、Yahoo!ニュースなどのポータル(キュレーション)サイトのこともあります。取材された記事と比べるとページビューは限定的です。感覚値ですが、100分の1くらいじゃないかと思います。なお普通、記者は原文転載ページを読みません。

 配信 

プレスリリースを電子メールなどでメディアに送ることです。配信先はメディア企業の代表だけでなく部署、番組、記者個人も対象です。取材してもらいたければ必須です。しかし、配信したら必ず取材されるというわけではありません。さらに、取材されても記事として公開されないことがあります。配信先が多ければ良いというわけではなく、適切に選ぶ必要があります。

プレスリリースサービスの提携と配信

パブリシティ

記者やライター、ディレクターが取材し記事として公開することです。取材する記者の専門分野や関心、メディアの編集方針、読者層、情勢などによってさまざまな視点や切り口があり、リリースした側の意図と一致した内容になるとは限りません。

有料サービスがすべて優れているわけではない

今日のプレスリリースサービスは概ね3種類の機能を提供しています。一つはメディアや記者に対して働きかける「メディア・リレーションズ」。二つめは生活者、一般消費者を対象に情報を提供する「パブリック・リレーションズ」。最後はSNSでの拡散を代行する機能です。

まるっとお任せで1件6万円、といったプレスリリースサービスもあります。広報費用として計上するのには楽でいいですが、成果はどうなのでしょう。メディア向けの広報とSNS向けの広報とではまるで異なります。

1件プレスリリースを出したらテレビに取材され、消費者からの問い合わせが殺到し、SNSでもバズりまくり……といった事例はそうそうありません。あまり多くを期待せず、効果測定を元にリリースのPVやパブリシティ数、SNSでの言及数を増やすなどの地道な改善を行いましょう。

以下、メディア・リレーションズを構築する意味で有料と無料のサービスの違いを比較します。

登録のしやすさ 

有料サービスの多くは申請と審査通過が必要です。自社のウェブサイトがあればより簡単に申請できますが、なくてもできます(追加の資料提出を求められる場合あり)。資本金や従業員数などの入力が必須の場合もあります。個人事業主にはハードルが高そうです。

無料サービスの方が利用登録のハードルが低い場合が多く、個人としての利用ができるものも。例えば自分の書いたブログを宣伝するプレスリリースを出し、流入増加を狙う使い方もできます。ただし、PressWalkerには個人は登録できません。

有料・無料とも、法人が登録する分には特に問題はないでしょう。ただし、アダルト、ギャンブル、出会い、スピリチュアル系のビジネスは登録できない場合が多いです。利用規約を確認しましょう。

エディタ機能 

有料サービスには専用エディタがあり、さまざまな表現が可能です。一方無料サービスではテキストと静止画1枚のみといった場合もあり、機能は限定的です。

ただし大手プレスリリースサービスによると、メディアの6割はファクスでの受け取りを希望しているそうです。装飾をもりもりに施して動画も埋め込んで……と頑張っても、白黒印刷が標準のファクスでは意味がありません。メディアに見てほしいなら、無料サービスの機能でも十分です。

提携先 

上の図でご説明した通り、プレスリリースの原文を自動的に転載してくれるメディアのことです。多いところでは数百もの提携メディアを持つプレスリリースサービスもあります。

「提携メディア」の項でご紹介した通り、提携先でのページビューはわずかなものです。ただしニュースサイトは検索結果の上位に表示されやすいため、SEOで有利になります。なかなか上位表示されず伸び悩んでいる時は施策の一つとして検討してもいいかもしれません。

サービス品質 

有料・無料いずれのサービスでも、プレスリリースに掲載基準があります。有料サービスではかなり細かく規定しているので、自社ビジネスは基準に満たないかも?と思った場合は事前によく検討しましょう。特に薬機法、投資関連は要注意です。

無料サービスの方が“ゆるい”ため、例えば「新しいブログ記事を公開しました」といった内容や、責任の所在がはっきりしない内容でも掲載できる場合があります。ただし、そうした情報は質が低いと言わざるを得ません。メディアへの露出は期待しない方がいいでしょう。

メディア露出 

取材をするかどうか決めるのはあくまでメディア・記者側です。大手の有料サービスはメディア企業や記者への接触を代行するオプションを用意しています。営業担当者が「こんなニュースがありますよ」と電話で売り込んでくれるのです。接触機会が多くなれば、売り込み先の記者がどんな分野を得意としているか、今どんなニュースを必要としているのかまで把握する担当者もいるかもしれません。

ところが現実にはそんなに優秀な人はそういません。PRサービスの売り込み電話を何度も受けましたが、はっきり言って迷惑でした。取材する側の事情をもう少し考えてくれよ……と思うことが多かったです。

仮に優秀な担当者がついたとしても、外注している限り広報ノウハウは自分たちのものになりません。オプション料金を払い続けるより、有能な広報部員を育てることにリソースを割いた方が長い目で見て役に立つでしょう。

サポート体制 

有料サービスの魅力は、なんといっても広報ノウハウの提供です。どんなプレスリリースをすれば記者の目にとまるのか、追加費用を払うことなくアドバイスを受けられます。

例えば大手サービスを使って私が配信したプレスリリースに対し「訪問してほしいウェブサイトのURLはなるべく前半に置いた方がいいですよ」と具体的なアドバイスをしてもらいました。リリースの書き方の相談に乗ってくれる会社もあります。

原稿作成を代行してくれるオプションも必ずと言っていいほどありますが、こちらも自分たちで書けるようになるまでの“授業料”的に考えた方がいいでしょう。

SEO 

厳しい掲載基準を持つプレスリリースサイトやその提携メディアのページは、優先して検索結果の上位に表示されます。

ただ、正確で需要のある内容を盛り込むのはプレスリリースの基本中の基本です。ポイントを押さえたリリースはSEOそのものです。

 効果測定 

有料サービスなら、出したリリースの効果測定ツールを無償で使えます(プランによっては使えません)。日別ページビュー数やSNSでのエンゲージメント数、提携メディアでの掲載数などがわかり、csv形式でダウンロードできるサービスもあります。

1回目からでも利用をおすすめします。というよりお金を払うなら効果測定をしなければ意味がありません。何をどう書けばメディア取材につながるか、実践と改善を繰り返す必要があります。

有料のサービスを利用すべき企業

逆に言えば、どういうリリースをすれば露出するかすでにわかっている場合は無料サービスでも構わないわけです。したがって、リリースのノウハウがわかるまでの間は大手の有料サービスを使い、ある程度知見が蓄積できたら無料サービスに移行する目標を立てると良いでしょう。有料サービスのスタンダードプラン(月6万円程度)を選んで意味があるのは、例えば以下のような場合です。

  • 広報部署のない企業
  • 広報部署はあるが、メディアとの付き合いがない企業
  • 法人成りしたばかりの一人社長
  • 設立して2年未満の企業
  • SNSでの拡散に限界を感じている場合

無料のサービスで十分な企業 

知見を蓄積できたというのは、以下のような状態を達成した時です。

  • リリースを書く手順が理解できた
  • リリースを書くべきかどうか判断ができる
  • リリースを元に複数回取材してくれたメディアがある
  • 知り合いの記者ができた

いずれも、何度もリリースを出さないとわからないことばかりです。プレスリリースサービスを使ってみたいけど不安という方は、UNICLAの無料相談をご利用ください。元記者としてアドバイスいたします。

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