「この施策、失敗だったら戻せるだろうか?」——DXや組織改革の会議でこんな質問をする人を見たことはありますか? 釧路川では1970年代に行った工事は30年後に元に戻す工事を必要としました。意思決定に「巻き戻しコスト」を織り込む必要性を教えてくれています。
曲がった川をまっすぐにしたら…
直線化の経緯
釧路川では1920年の大洪水を契機に、治水と農地開発を目的とした河川改修が進められました。戦後から1980年代にかけて、蛇行していた河道が直線化され、周辺の湿地の開発が行われました。

洪水被害は軽減されましたが、水の流れが速くなり河床が低下したことで、流域の地下水位が下がってしまったのです。
なお川の直線化工事は多くの先進国で行われ、河川・湿地性動植物の減少も同様に起きています。
直線化の結果
地下水位が下がったことで釧路湿原は乾燥化が進行してしまいました。本来の湿原植生であるヨシ・スゲ湿原が減少する一方、乾燥に強いハンノキ林が拡大。また魚類や水生昆虫の生息環境が劣化するなど、生態系に大きな影響が現れました。

まっすぐな川を元の曲がった姿に戻す
自然再生事業に至る経緯
1987年の国立公園指定後、環境保全を求める声が高まり、1999年に国土交通省が「釧路湿原の河川環境保全に関する検討委員会」を設置しました。2001年に同委員会が湿原環境の保全に関する提言をまとめ、2002年に自然再生推進法が制定されました。これを受けて2003年11月、環境省、国土交通省北海道開発局、北海道、地域住民、NPOなど105人からなる「釧路湿原自然再生協議会」が発足し、自然再生事業の実施が決定されました。
以下の四つが目標です。
(1)魚類・水生昆虫の生息環境の復元
(2)氾濫頻度の向上による湿原植生の復元
(3)下流の湿原帯への土砂・肥料由来の栄養塩の流出防止
(4)自然状態に近い河川景観の復元
工事の概要と費用
国土交通省北海道開発局釧路開発建設部により、2007年から2011年まで約9億円をかけて実施されました。釧路川河口から約32キロ地点の茅沼地区において、1.6キロの直線区間を2.4キロの蛇行河道に復元しました。
工事完成後の結果と現在
2011年の完成後、魚類や水生昆虫の種数・個体数が増加し、氾濫頻度の向上により地下水位が上昇、約30ヘクタールの湿原植生が回復しました。
北海道大学の調査で、四つの目標をほぼ達成したことが確認され、Restoration Ecology(電子版)に掲載されました。アジア初の河川蛇行復元の成功事例として国際的に評価されています。

ビジネスパーソンが得られる教訓
効率化施策の修正コストは、初期投資の何倍になるでしょうか? 釧路川の事例では、直線化から復元着手まで30年、検討期間8年。蛇行化復元事業の費用は約9億円でした。短期的な効率化判断が長期的な負債を生む構造は、河川もビジネスも変わりません。DX・AI導入での効率化が注目される今こそ、可逆性思考を持っておくことが望まれます。
企業の広報では、「◯%の業務を効率化」「◯円を削減」といった数字は確かに人目を引きます。それと同時に、効率化による悪影響へどれだけ配慮しているかも発信することを心がけましょう。
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