「文章が下手だと言われたが、どうすればうまくなるのかわからない」。率直なお悩みを何度も聞いてきました。
- 文章術の本を読む
- 名文家の文章を読む
- 良い文章を書き写す
いずれも正論です。
残念ながら「それができれば苦労はない」が本音ではないでしょうか?
UNICLAでは、もっと簡単で気づいた時にすぐできるトレーニングをご紹介します。
気づいた時にすぐできる文章力トレーニング
それは、街で見かけた看板やちらしなどの文言を要約してみること。
新聞のコラムや社説を要約する必要はありません(作文術の本によく書いてありますが)。
「目には留まったけど、内容が頭に入ってこない」文章を要約してみるのです。
一つ例をご紹介します。
あるアクティビティーの受付付近にあった張り紙です。
この張り紙の内容を作り直してください。方針は以下の三つです。
- 読んだ人が何をすればいいかすぐに分かり、実践してくれる
- 文字数は少なければ少ないほどいい
- 必要があればデザインを追加する
制限時間は5分です。
読み手は不特定多数。もしかしたら日本語の読み書きが不得意な人もいるかもしれませんよ。
できた方は次に進んでくださいね。
↓ ↓ ↓
回答例
「予約」が合計4回出てきます。
そう、このアクティビティーは予約しないと参加できないのです。
しかも予約はWebでしかできないようです。
直した文章の例です。
敬語は必須ではない
- 文字数を極力減らす
- 当日も予約はできるので、予約サイトに飛べるQRコードを追加(ダミーです)
- 簡単な英訳をつける(おまけ)
「予約されたい方はWebでの予約をお願いします」
予約されたい、は丁寧に書こうとしたのでしょう。敬語として正しくは「予約なさりたい方」です。「予約されたい」だと、厳密には「予約してもらいたい」という意味になってしまいます。
もっと簡潔に「ご予約は」でも丁寧な表現になります。ただ、読み手に理解と実践を求めるための注意書きです。敬語や丁寧な表現はなくてもいいのです。
「予約したい人はWebでの予約をお願いします」
「予約」が2回出てきます。予約したい人は、お願いされなくても予約をするでしょう。無駄な「予約」を一つ削ります。
予約はWebでお願いします
Webで予約をお願いします
こちらでスッキリします。
読んだ後の行動を想像する
上記の文でもいいですが、肝心の予約サイトがどこにあるかわかりません。お客さんは自分で検索してサイトを見つけなくてはならず、不親切な案内です。
そこで、スマートフォンで読み取ってもらうためのQRコードを追加します。読み取りやすい大きさにするには、文字を減らしてスペースを確保しましょう。QRコードをスマートフォンのカメラで読み込むとインターネット機能が立ち上がることは知られていますので、「Web」も不要です(そもそもスマートフォンがないとその場で予約できません)。
参加は予約を
これで完成でもいいでしょう。もっと文字を減らした例として
予約専用
としてみました。受付付近に置く案内であり、参加したい人向けに出すものですから「参加は」はこの場合なくても通じると判断しました。状況に応じて文字数、情報量は調節しましょう。
この注意書きを見るのはどんな場面か、またお客さんはどんな年齢や性別なのかによって語句は変更可能です。もう少し穏やかな印象を出したいなら「予約のみ」でもいいですね。
伝えたい内容は一つの文に一つだけ。丁寧に説明しようとして繰り返し書くと、かえって何を伝えたいか分からなくなってしまうのです。
「予約可能時間は14時までとなっております」
「14時以降の予約はできませんのでご注意ください」
二つの文は同じ内容です。
「予約可能時間は14時まで」と「14時以降の予約はできません」は、14時以前と以降の状態を言い換えただけですね。
そもそも注意書きなので「ご注意ください」は不要です。
当日予約は14時まで
文字数は極力減らしましょう。スペースが空く分、最も重要な情報のフォントを大きくして目立たせたり、必要なのに欠けていた情報を追加したりできるからです。
ぼやけた日本語を機械翻訳にかけると…?
英訳はおまけです。新型コロナウイルス感染症の水際対策が緩和されて外国人観光客の増加が再び予想されます。せっかく案内を出すなら他言語の訳があったほうがいいでしょう。
その際も元になるのは日本語の説明文です。日本語に無駄な情報や不要な表現が入っていると、文意がぼやけてしまい翻訳が難しくなります。こなれていない日本語の文章を機械翻訳し、表示された訳文をそのまま使うのはやめましょう。ネイティブの人が読むとかなり奇怪な文で、Facebookに「日本で見かけたおかしな英語(Engrish in Japan)」グループページがあるほどですから……。
要約のメリット
文章を簡潔にすれば、余ったスペースで別の情報やデザイン的要素を追加できます。また、文章が分かりやすければ同じことを何度も聞かれなくなりますし、誤解も減ります。一度読んで頭に入ってくる内容なら、忙しい人にも読んでもらえるかもしれません。
要約するには本当に伝えたいことは何かを読み取る必要があります。つまり読解力も鍛えられ、“頭が良くなる”ということ。今日からぜひトレーニングを始めましょう!