何度も同じ語句を使っていませんか? “因数分解”で説明を簡潔にする中級者向けトレーニング

文章を書く際、大事なところは何度も繰り返したり、伝わるように事例をたくさん並べたりしていませんか? こちらの記事では、文章を簡潔にするコツをご紹介します。

目次

注意書きやチラシなどを使ったトレーニング

とあるシャワールームの照明器具の横に、以下のような注意書きを見つけました。

照明器具の取り扱いを間違えると感電や火災のおそれがありますから、使い方をユーザーに理解してもらう説明はとても大事です。

それなのに、私にはなぜか内容が頭に入ってきませんでした。みなさんはいかがでしょうか?

内容が頭に入ってこない文章は、どこか修正できるポイントがあるはずです。どこを直せば分かりやすくなるかを考えるトレーニングです。

取り扱い説明書などの技術文書には国際規格があるそうです。記号などの使い方がバラバラだとユーザーが困ってしまいますものね。

ここでは規格は脇に置き、「メーカーや設置者の意図した通りにユーザーがお手入れを実践する」目的の文書に編集しましょう。

 重要なことは目立たせ、最初に読んでもらおう 

私が手入れをするとして、まず気になるのは「何をすればいいのか」です。

実際、「■照明器具のお手入れのしかた」は他の行より若干大きく書いてありました。

でも一番下なんですよね。

注意書きはシャワールームの壁の上の方に貼ってありました。だからこそ一番下、ユーザーの目に一番近いところに一番読んでほしいことを書いたのかもしれません。

フォントが目立って大きいとは言えませんし、文字の色も他の行と同じです。「ここが重要」とパッと見では分からなければ、上から順に読みたくなるのが人情というもの。

何行か「してはいけないこと」を読まされた後でやっと「すること」の指示が出てくるのは不親切です。

最初の行に、目立つよう大きなフォントで書けば最初に読んでくれるでしょう。

 カバーは布をふく? 布でカバーをふく? 

では、具体的にどんなお手入れをすれば良いのでしょう?

カバーは水またはぬるま湯を浸した布をよくしぼってからふいてください。

カバー「は」。この「は」、日本語の難しい点の一つです。

日本語文法では「とりたて助詞」などと言われています。説明はまた別の機会にするとして、書き言葉では「てにをは」の使い方に注意を払いましょう。

話し言葉では特に気にならない文章です。しかし書き言葉には息継ぎや抑揚など文字以外の情報がありません。「てにをは」をうかつに使うと、分かりにくくなってしまいます。

カバー水またぬるま湯浸した布よくしぼってからふいてください。

「は」が2回、「を」が2回ずつ出現します。同じ助詞の使用は一文に1回に抑えましょう。分かりやすく、誤解を招きにくくなります。

・水またはぬるま湯を浸した

・よくしぼって

こちらの2節は、いずれも「布」を説明(修飾)しています。

「カバー」と「ふいてください」の位置が離れているせいもあって「布を…ふいてください」という文になっています(誤解はしないでしょうけれど)。語順を入れ替えましょう。

ぬるま湯浸してよくしぼった布カバーふいてください。

これなら、どんな布が必要なのか分かりやすくなります。

A×B+A×C+A×D=?  

この注意書きは、シャワールーム内の照明器具の真横に貼ってありました。必ずそこに貼ると決まっている(シャワールーム工事施工業者に指示している)なら「照明器具」と何度も書く必要はありません。冒頭に“タイトル”をつけ、「この注意書きは照明器具の使い方を書いているよ」と明確にしましょう。具体的には、フォントを大きくする、色を変えるなど目立たせる工夫をします。

照明器具にタオルなどをかけない+照明器具のカバーを外して使用しない+照明器具に直接水をかけない

照明器具の使い方(タオルなどをかけない+カバーを外さない+水を直接かけない)

こうした書き換えを、私はA×B+A×C+A×D=A(B+C+D)のようにとらえています。

他の部分もできそうですよ。

 文を“因数分解”してみよう 

禁止🚫の部分は、火災、感電、電球破損などを起こしかねないのが理由です。

理由をAという記号、禁止行為をそれぞれB、C、Dという記号で置き換えると

Bは禁止、Aのおそれがあります

Cは禁止、Aのおそれがあります

Dも禁止、Aのおそれがあります

こう書いてあるわけです。

“因数分解”の考え方で簡潔にしてみましょう。

Aのおそれがあるため(B,C,D)を禁止します

スッキリしますね。

記号を使うなら、同じ意味の言葉は不要  

上記を踏まえ、注意書きを書き換えてみました。

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