作文・感想文にも使える! 文章力にお悩みの方向けに元記者からのアドバイス

文章力がある人とない人の差はなんでしょうか?

よく言われることの一つは、語彙(ボキャブラリーの数)や比喩(たとえ)が豊かかどうかということ。

そして、語彙や比喩の力は本をたくさん読んで身につけるしかないのが定説です。

でも、忙しいビジネスパーソンや、今すぐ作文を書かなければいけない人にとっては「それができれば苦労はない」と感じませんか?

この記事では、本を読まなくてもその場で語彙や比喩を豊かにできる方法をご紹介します。

目次

観光先での体験を題材にした作文トレーニング

小春日和が続く11月前半は絶好の観光シーズン。週末にどこかへおでかけする方も多いことでしょう。

綺麗な写真が撮れたら、SNSにアップして報告したいですよね。

栃木県の観光名所「華厳の滝」で、夜間も滝を鑑賞できるライトアップがありました。共同通信が記事を配信しています。

 中禅寺湖を背に、流れ落ちる水は白い線となって浮かび上がった。栃木県日光市の「華厳の滝」のライトアップが12日に始まり、雄大な自然と幻想的な光の美しさで、観光客らを魅了した。(中略)

 日本三名瀑の一つである華厳の滝。中禅寺湖の水が高さ97メートルから流れ落ちる姿が人気で、光に照らされると、よりいっそうの迫力を感じる。

共同通信「日光、美しく輝く華厳の滝 晩秋の幻想、20日まで点灯」(2022年11月12日)
https://nordot.app/964102474371776512
華厳の滝(出所:photoAC)

通信社や新聞社の記者の仕事に「絵解き原稿」というものがあります。

綺麗な写真を見た読者が

「ここはどこだろう」

「行ってみたいな」

「どんなところかもっと知りたい」

「いくらかかるんだろう」

といった疑問を持つと想定し、その補足説明をするのが記事(テキスト情報)の役割です。

見れば分かることは書かない

絵解き原稿は、撮影と記事執筆でそれぞれ別の記者が担当することが多かったです。

華厳の滝なら東京本社の写真記者がやって来て撮影し、記事は栃木県の駐在記者が書くという具合です。

私が絵解き原稿を初めて書くことになった際、先輩から言われたのは

「写真を見れば分かることは書かない。それ以外の情報を入れる」

つまり、視覚以外の情報をできるだけ追加せよという教えでした。

引用した原稿では

「中禅寺湖を背に」

「日本三名爆の一つ」

「水が高さ97メートルから流れ落ちる」

などは、写真を見てもわからない補足情報です。特に「97メートル」といった具体的なデータは、滝の長さや滝壺までの高さを想像するのに有益な情報ですね。

一方、

「白い線となって」

「幻想的な光の美しさ」

などは視覚情報です。

ただし、この二つは写真を見れば分かります。

音、味、におい、触った感じを書く

私は華厳の滝に行ったことはありませんが、この時期の日没前後なら相当寒いはずです。

それに、滝ですから水の流れ落ちる音がするはずです。

「高さ97メートルから流れ落ちる姿」を見たとき、どんな感覚を持つでしょうか。

「光に照らされると、よりいっそうの迫力」とは、具体的にはどんなことでしょうか。

視覚以外の感覚とは、一般に「聴覚、触覚、味覚、嗅覚」です。

昔は「音、色、においを盛り込め」と言われました。新聞は白黒印刷が前提なので「色」が入っていますが、カラーが当然の今では「味」「触った感覚」を入れるといいでしょう。表現が立体的になり、読み手が想像しやすくなります。

「触った感覚」は、ザラザラとかゴリゴリとか、普段使っているオノマトペで構いません。語彙を増やさなくても、これだけで表現の幅が広がるのです。

追加できそうな時は、作文の際に思い出して盛り込んでみましょう。ただし使い過ぎると幼稚な印象を与えてしまうので注意しましょう。

その場にいたからこそ分かること

聴覚情報なら、華厳の滝の動画を見れば補足できるかもしれません。また、滝を見ても「味」「におい」は感じなさそうです。対象が景色だと、どうしても視覚に頼った文章になりがちです。

そんな時には、体を使って書きましょう。

つまり、その場で起こった身体的反応についてです。

書こうとしている場面で、自分の身体はどのような反応を示したかを書きます。

11月の宵に屋外にいたら、寒いですよね。吐く息はどうでしたか? 手足が震えたり、背中に寒気を感じたりしませんでしたか? 改めて思い出してみましょう。

また、高さ97メートルの滝を見下ろすと体はどう反応したでしょうか? その時の感覚を言葉にしましょう。

五感と身体反応を使って(妄想で)書いてみた

冒頭の記事を、私の妄想で書き直してみました。

 夕暮れの中禅寺湖を背に、流れ落ちる水が浮かび上がった。栃木県日光市の「華厳の滝」のライトアップが12日に始まり、観光客らは白い息を吐いて歓声を上げていた。
 日本三名瀑の一つ。「サァー」と絶え間なく音を立てるだけだった滝に光が当てられると、白い線が闇の中に現れた。高さ97メートルの全体像は見えず、どこまでも続く深い闇の中に消えていく。寒さよりも迫力のせいで背筋がブルっとした。

視覚情報だけでは「写真や動画を見ればだれでも書ける」文になりがちです。

視覚以外の情報や身体反応を取り入れると、難しい語彙を知らなくても表現の幅が広がります。

独創性、表現力を磨きたい方は参考にしてくださいね。

#独自性#作文#原稿#五感

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