採用面接では、普段と違いかしこまった言葉遣いをするよう心がけますよね。間違った使い方や意味を正しいと思い込んでいませんか? 自分の思い込みに気づくのは難しいもの。この投稿を読んでもし思い当たるところがあれば正しくインプットしなおしましょう。
「打ち合わせはリスケさせてください」
例えば急にトラブルが起き、カジュアル面談の予定変更を打診しなければならなくなった際、こんなメッセージを送ってはいませんか?
本日の打ち合わせはリスケさせてください。
リスケとは英語の「reschedule」(リスケジュール、日程の再調整)を省略した言葉。日常的に使っている人もいるかもしれません。
すでに定着している「スケジュール」などとは異なり、リスケは比較的新しい外来語です。元の言葉を縮めていることもあって“業界用語”のように受け止められる恐れがあります。ちょっと軽薄な感じがしてしまうのです。
調査もあります。2023年度版の文化庁「国語に関する世論調査」によると、英語の略語(AEDやDXなど)の多用をあまり好ましくないと感じる理由の一つに「見た目ばかり気にしているようだから」が挙がっています。
仲間うちでは問題がない言葉でも、読み手によっては失礼な感じを与えてしまう場合があります。大事な相手にお願いをする場合は使わないほうが無難でしょう。特に、本例では面談をお願いする場面です。時間を確保してもらったのに自分の都合で変えてしまうのですから、誠意を尽くしてお願いをするのが礼儀というもの。
「リスケ」ではなく日本語を使って丁寧にお願いしましょう。
本日の打ち合わせは延期をお願いします。
相手が立派すぎて名前負け?
有名な大企業の採用面接を受けることになったら、こんなふうに言いたくなりますか?
大企業なので名前負けしそうです。
使い方は正しいでしょうか?
「名前負け」とは、自分に付けられた名前や称号が立派すぎ、劣って見えてしまう時に使います。
「子供に“家康”なんて付けたら名前負けするよ?」
「営業部長を拝命しました。名前負けしないよう精進します」
など。
相手の名声を前に緊張し、実力を発揮できないと言いたい時は「気後れする」「怖気付く」「畏縮する」などとすると良いでしょう。
大企業なので気後れしてしまいます。
「人事部の◯◯さんはおられますか」
企業を訪問し、受付でアポの相手を呼び出す際にどう尋ねますか?
人事部の◯◯さんはおられますか。
言葉の使い方は正しいでしょうか?
「おる」は通常「いる」の謙譲語として使います。
「ここにいます」→「ここにおります」
「待機しています」→「待機しております」
などですね。
謙譲語は自分側の行為に用いるへりくだり表現。「おられる」は「おる+れる(尊敬語)」の形となり、文法的には誤りというのが一般的な理解です。
人事部の◯◯さんはいらっしゃいますか。
しかし、西日本では「いる」の代わりに「おる」を使います。「そこにおる?」(共通語では「そこにいる?」)
「おる」を非敬語として使う場合は、尊敬語の「れる」をつけて「おられる」にしても間違いだとは言い切れません。
2004年度の文化庁「国語に関する世論調査」では、以下の文についてどう思うか調査しています。
「総務課の武田さんは,どちらにおられますか。」
この「おられますか」を「正しく使われていると思う」と回答した割合は全体で58.3%。年齢別に見ると、男性は30代、女性は40代で「正しく使われていないと思う」の割合が最多でした(男性44.2%、女性37.4%)。
相手によって受け止め方は違うので「いらっしゃいますか」「おいでになりますか」を使う方が無難かもしれません。
敬語のフレーズは限られているので普段から積極的に使って慣れていきましょう。
「営業職やプロデューサーを歴任しました」
経歴を紹介する文章で、以下のように書いてあるのを見かけることがあります。
事業会社で営業、IT企業でWebディレクター、広告代理店でチーフプロデューサーなどを歴任しました。
れき‐にん
[名](スル)次々に各種の官職に任命されて勤めてきたこと。「重要ポストを—する」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
官職はいわゆる公務員のこと。本来は大臣や大使級の職を次々に任命され務めてきたことを指します。普段はそう使わない言葉であることに注意しましょう。民間企業の場合、大企業の社長や会長など、例えば経団連会長クラスならしっくりきます。民間企業の一般の職務を「歴任」と紹介してしまうと、「何をおおげさな」と思われてしまうのでやめておきましょう。
また、同一の職務をこれまで担ってきた複数の人を紹介する際に「歴任」を使うのは誤りです。1人の経歴に使います。
Wikipediaの人物紹介ではこんなふうに頻繁に登場することがあるので「経歴紹介には『歴任』」とインプットされてしまった方もいらっしゃるかもしれません(なぜか競馬新聞のエントリですが、他意はありません)。
「歴任」を使わず、自分の経歴を紹介するには例えばこんなふうに書いてみましょう。
事業会社で営業、IT企業でWebディレクター、広告代理店でチーフプロデューサーなどを経験しました。
よく間違う表現を、採用面接や打ち合わせの場面に限定して四つピックアップしました。他にも知りたい場合は、AyanのInstagramをフォローして事例を読んでみてください。また職務経歴書やエントリーシートの志望動機などにもアドバイスしますので、こちらから30分の無料相談を予約してくださいね。