「品のある文章」を書く、今すぐできるコツ――比喩を整える

文章の品格を上げる比喩の整え方 バナー

「書いた文章が、なんか刺さらない」——そう感じたこと、ありませんか? 職業柄、私はセミナー告知文や集客LPを常に目を通しています。最近はAIで書かれたと思しき文章に多数出会し、辟易しているところです。

理由は明白です。AIはよくある語句のつなぎ合わせているだけだから、どこかで見たような文章になり、同じような表現や構造が頻発します。代表的なのは「これにより、〜が可能となります」。AIが登場・普及する前はほぼ見ることがありませんでした。今では1日に3回は目にしています(本当)。

AIを使うなという意味ではありません。時間短縮になるし、私も毎日使っています。でも「これにより」構文を見るたびに、読者の一人として残念な気持ちになっていることは明言しておきます。

本コラムでは、AIの陳腐な文章を「品のある文章」にどう直していくかの技術を、比喩を事例に述べます。だれでもすぐ取り入れられるコツですので、読み終わったらすぐに実践してみましょう。

目次

AI文章のどこが陳腐か

AIの文章は文法が破綻していませんし、言っていることも常識的です。

例えばこんな文章。

このセミナーでは、AI活用の基礎から実践までを体系的に学ぶことができます。これにより、集客力の向上やブランド認知の拡大が可能となります。

意味は分かりますし、どんな内容なのかうっすら想像することもできます。

しかし、このセミナーを受けたいと思いますか?

私の場合、無料でしかも何かおまけ(プロンプトとか)をくれるならいいかなと思う程度です。なぜか? この程度の内容のセミナーなら他にいくらでもあるからです。

「体系的に学ぶ」「集客力の向上」「ブランド認知の拡大」。どれも便利な言葉ですが、読んだ瞬間に思考も停止します。「ああ、またこんなのか」と。自分の生活から離れた、遠くの世界での出来事のように感じるからです。

そこで活用したいのが比喩表現です。

説得するのが上手な人は、上手に例え話(譬喩、比喩)を使います。新約聖書には30以上もの例え話が出てくるそうです。聞き手(読者、ユーザー)は知識や経験などの前提がみな同じとは限りません。同じことを説明してもすぐに分かる人とまったく理解できない人がいます。そこで、だれもが理解できる身近な例になぞらえて説明するのです。

二つの事例で解説します。

第一歩を始める?

このセミナーでは、AI活用の基礎から実践までを体系的に学ぶことができます。これにより、集客力の向上やブランド認知の拡大が可能となります。あなたも第一歩を始めてみませんか。

前半部分はさておき、第3文の意味は明瞭です。「さあ始めましょう」という呼びかけですね。

じゃあ、「さあ始めましょう」でいいのではないでしょうか……。

そもそも「第一歩」に「始める」が含意されています。例えば「このプロジェクトがキャリアの第一歩になった」を考えてみましょう。キャリアの最初の仕事として、プロジェクトに参加したという意味です。「このプロジェクトでキャリアを始めた」と言い換えられますね。第一歩、始める、どちらかが欠けていても意味が成立します。だからどちらかを省いて良いのです。

「いやいや、『〜しませんか』の方が優しく誘う感じを演出できるし、そう書きたい」

そんなあなたは、文章がうまくなる伸びしろをお持ちです。ぜひそうしてください。「第一歩を踏み出してみませんか」と言い換えてみましょう。

「第一歩」は、何かの過程を道のりや歩みにたとえた表現です。だったら、受ける動詞も歩みから連想される言葉にしましょう。「踏み出す」がいいですね。

こうした組み合わせをコロケーションといいます。別に「第一歩を始める」でも間違いではありませんし、よく聞きます。でも「第一歩を踏み出す」と歩みの比喩で揃っていると、推敲したなと感じられますし、書き手の品格を想像させるのです。

前半部分も含めて、以下のような告知文ではどうでしょうか。

このセミナーは、日々のSNS更新を負担に感じている方が、AIを活用して投稿ネタを大量に作成したり、自動で投稿したりできるようになることを目標にしています。AIの使い方や種類、注意すべきポイントから段階を踏んで実務レベルまで学びます。SNS更新を手軽に、楽しく続けるためにあなたもまずセミナーに参加してみませんか。

プロフィールが散らかる?

次に気をつけたいのは、例が分かりやすいかどうか。例えば以下の文です。

SNS広告でお客さんを呼び込んでも、お店(プロフィール)が散らかっていたら誰もフォローしてくれません。

こちらは「お店」に例え、SNS広告とSNSアカウントのプロフィール画面の関係を説明するくだりです。

ちょっと補足しますね。SNSに広告を出すと、普段は交流のないユーザーのタイムラインにも表示され、自分のアカウントを見にくる人が増えます。例えば「文章術を教えます」と広告を出したとしましょう。しかし、広告をタップした先に「おいしかったランチの店」「遊びに行った先のきれいな景色」などが雑然と並んでいたら、ユーザーは困惑します。おいおい文章術は教えないのかよ、と離脱するでしょう。だから自社アカウントには広告で出した情報――いつまで、いくらで、どこで売っているのかなど――がすぐ分かるように整えておくべきだ、という意味です。

前掲の文では、「SNS広告」「(プロフィール)」「フォロー」などSNSの文脈で使う語句と、「呼び込んで」「お店」「散らかって」といった例え話での語句が混在してしまっています。どこまでが現実の話で、どこからが比喩なのかの境目がありません。

「今から例え話をしますよ」と分かりやすく示すと、表現がねじれません。例えば以下のように書いてみましょう。

実店舗に例えれば、せっかく広告で新しいお客さんを呼び込んでも、お店が散らかっていて何を売っているのか分からなければ入店してくれません。

意識したいのは、比喩の後、現実の話に再度引き戻して説明することです。上記の文には以下のように続けると読み手の理解が深まります。

したがって、SNSのプロフィール画面で何を扱っていてどのように購入できるのか分かるよう、広告を出す前に情報を整えておきましょう。

現実→比喩→現実の順だと説得力がさらに高まります。少し前に書いた「ちょっと補足しますね」で始まる段落を読み直してみてください。

まとめ:古今東西、例え話の重要性

「豚に真珠」の出典は新約聖書です。ブッダもさまざまな例え話を用いて真理を説きました。説得の上手な人がいかに例え話を駆使したか、歴史からもわかりますね。相手に分かってもらうために、例え話は積極的に用いるといいでしょう。

比喩の品格を上げるため、注意点として以下の二つをお示ししました。

①例える表現を揃える。

②どこからどこまでが例え話なのか明示する。

大きく書き直す必要はありません。一語変える、一文つなげる——その小さな判断の積み重ねが、文書全体の品と説得力を変えていきます。今日から一つだけ試してみてください。

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